新撰組の屯所:旧八木邸・旧前川邸は今でも新撰組の痕跡だらけ

八木邸

江戸幕末の動乱期、京の都を震撼させた新撰組が屯所としていたのが、壬生の郷士・八木源之丞のお屋敷でした。浅田次郎の『壬生義士伝』や司馬遼太郎の『燃えよ剣』もさることながら、香取慎吾さん主演の大河ドラマ『新撰組!』で、各段に知名度が上がったのではないでしょうか。

旧八木邸は、新撰組が滞在していた頃の痕跡が感激するほど残っており、歴史好きにはたまらない場所です。旧八木邸の観光について、紹介します。

旧八木邸の概要

八木邸とは、江戸時代末期に壬生に住んでいた郷士・八木源之丞のお屋敷であり、新撰組発祥の地となった場所です。

大河ドラマ『新撰組!』では、近藤勇らも壬生にいる間はずっと八木邸に居候していたこととなっていましたが、実際は新撰組の規模も大きくなってくると、芹沢鴨ら水戸一派が八木邸に、近藤勇ら試衛館一派は向かいの前川邸に移り住んでいたようです。


新撰組はなぜ八木邸に住んでいた?

上洛する第14代将軍・徳川家茂の警護という名目で、清河八郎が江戸の”伝通院”で浪士を集めて結成したのが、新撰組の前身の浪士組。その浪士組が京都に到着してから、宿泊先とした宿の一つがこの八木邸です。

浪士は数百人いたので数ヶ所に分かれて宿泊していましたが、この八木邸と向かいの前川邸が、後の新撰組を結成する近藤勇・土方歳三・芹沢鴨らの屯所となっていました

清河八郎は「本当は天皇を中心とした国を作るためにこの浪士組を結成した」という策略が発覚し、浪士組は解散に追いやられます。しかし、当初の目的を貫くため、近藤勇・土方歳三らの試衛館出身者と、芹沢鴨ら水戸組がこの壬生という地に残り、後に新選組となる壬生浪士組を結成し、数々の悲劇のドラマを生み出すこととなるのです。

旧八木邸の見どころ

芹沢鴨らが暗殺された部屋、近藤一派が襲撃した時についた刀の痕、芹沢鴨がつまづいた文机など、当時の痕跡が驚くほど残っています

八木邸は一般公開されており、定期的にガイドツアーが開催されています(自由観覧ではなく、ツアー参加のみでの観覧です)。ガイドツアーは、当時隣の部屋で芹沢鴨らの暗殺劇を見ていた、八木家の息子が後に語った内容ということで、大変面白い内容です。

芹沢鴨らが襲撃された部屋

本玄関から屋敷内に入ると、中の間、奥の間と続きます。この”奥の間”が芹沢鴨らが使っていた部屋のようです。1863年(文久3年)9月18日深夜、芹沢鴨、平山五郎、平間重助や、芹沢鴨の愛妾お梅らが寝ていたところ、近藤一派が襲撃し、暗殺しました。

この時、平間らは逃走しましたが、平山とお梅は即死だったといい、血痕が飛び散った天井が今もそのまま使われています。(黒ずんでいて、はっきりと血痕だとみわけることは難しいですが。)

私が訪問した9月中旬は、ちょうど芹沢らが暗殺された日に近く、芹沢鴨、平山五郎、お梅の法要をしていました。史実がぐっと身近に感じます。

芹沢鴨暗殺時の刀の痕

近藤一派は庭の方から八木邸に侵入し、芹沢鴨らが襲撃された部屋の入り口には、その時の乱闘でついた刀の傷痕がはっきりと残っています

大河ドラマ『新撰組!』では、藤原竜也さん演じる沖田総司が思い切り刀を振りかざした際に障子のサン(?)にガツンと刀を当ててしまい、抜けなくなってるシーンが描かれています。

芹沢鴨が死の直前に躓いた文机

寝込みを襲撃された芹沢鴨は、それでも何とか応戦して隣の部屋まで逃げ込みます。その隣の部屋には、八木家の妻や子供が寝ていました。その部屋の縁側の出入り口付近には小さな文机が置いてあります。芹沢鴨は、その小さな文机につまずいて倒れ、その隙に留めの一撃を受けて落命しました。

大河ドラマ『新撰組!』では、芹沢は自身が飲んでいたお酒の入ったひょうたん型の徳利を踏んづけてひっくり返りましたが、実際は八木家の文机だったのです。その文机が、今もそこに置かれています

新撰組屯所・旧前川邸

前川邸

八木邸とともに新撰組の屯所となった旧前川邸は、現在も個人の住居になっているため一般公開されていません。

外観を眺めるだけですが、新撰組総長の山南敬助が切腹する前に、恋人の明里と格子越しに別れを惜しんだ出窓の写真が貼ってあります。今はその出窓はなくなってしまっていることが、とても残念です。

山南さん切腹場所
内部は見学することができませんが、この山南さん切腹の部屋は、今も残っているそうです。また、池田屋事件のきっかけとなる「古高俊太郎の拷問」をした蔵も残っているそうです。その蔵からは八木邸がよく見えるそうで、芹沢鴨暗殺の日、近藤一派はここから八木邸を観察して襲撃のタイミングを見計らっていたそうです。

一般公開されていないのが残念ですが、その場に立って外観をみながら思いを馳せるだけでも行く価値があるのではないでしょうか。

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新撰組に関するオススメの本・映像

大河ドラマ『新撰組!』

何と言っても一番のオススメは、2004年大河ドラマ『新撰組!』です。

脚本が三谷幸喜なので面白いに決まってますが、配役がまた素晴らしく、香取慎吾は回が進むにつれてどんどん近藤勇に見えてきますし、山本耕史の洋装姿は土方歳三にしか見えません。そのほか秀逸な配役は、堺雅人の山南敬助です。土方と馬が合わず新撰組に居場所がなくなって追い詰められた山南さんが、最後に明里と別れを告げて切腹するシーンは、最も心に残るシーンです。

現在に残る逸話もふんだんにちりばめられているので、歴史の深堀にも役立ちます。

燃えよ剣

司馬遼太郎の長編小説。新撰組副局長であった土方歳三を描いた作品です。上・下巻に分かれており、新撰組全盛期を知りたい方には、上巻だけでもぜひ読んでほしい名作です。

壬生屯所旧跡八木家の基本情報

観光基本情報

開館時間: 9:00~17:00(最終受付は16:00)
所要時間: 1時間程度
入館料: 大 人:1,100円(税込)(ガイド・抹茶・屯所餅付き)
中高生:1,100円(税込)(ガイド・抹茶・屯所餅付き)、600円(税込)(見学のみ)
小 人:800円(税込)(ガイド・抹茶・屯所餅付き)、300円(税込)(見学のみ)
休館日: 不明
所在地: 〒604-8821 京都市中京区壬生梛ノ宮町24
公共交通機関: 阪急京都線 大宮駅、京福電鉄嵐山線 四条大宮駅:徒歩8分
公式HP: 新撰組発祥の地 壬生屯所旧跡 八木家

(2022/3現在)

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