Impeachment

米下院議会が2019年12月18日、トランプ大統領のウクライナ疑惑をめぐって、弾劾訴追の決議案を可決しました。

アメリカ史上、これまでに弾劾訴追された大統領は3人。1868年の第17代大統領アンドリュー・ジョンソン、1998年の第42代大統領ビル・クリントン、そして2019年のドナルド・トランプ。

NHK NEWS WEB:トランプ大統領を弾劾訴追 アメリカ史上3人目 米議会下院

ところで、米国大統領の弾劾といえば、ウォーターゲート事件のリチャード・ニクソンが真っ先に思い浮かびませんか?

なぜニクソン大統領はここに仲間入りしないのか、わかりやすく解説していきます。

ウォーターゲート事件のリチャード・ニクソンは?

ニクソン大統領は、アメリカ史上唯一の辞任した大統領であり、弾劾された大統領ではありません

どう違うのか?

辞任とは、自分から辞めること。弾劾は、辞めさせられること。つまり、同じ大統領を辞めるということでも、ずいぶん意味合いが違うのです。

ではまず、そもそもウォーターゲート事件とは何か、簡単に見ていきます。

ウォーターゲート事件とは

ウォーターゲート事件は、共和党のニクソン大統領が2期目の大統領選挙戦に勝つために、敵の民主党本部に盗聴器を仕掛けさせたことに端を発します。

ところが、計画は失敗。実行犯は現行犯逮捕され、ニクソン大統領の関与が疑われました。

ニクソンは自らの関与を否定して、隠ぺい工作に走りました。しかし、ニクソンの側近たちが徐々に真実を話すようになり、大統領自らの関与やその隠ぺい工作すべてが明らかとなりました。

支持率は20%台までに大幅に下落し、与党共和党員からの批判の声もあがっていき、弾劾を免れない状況に追い込まれたニクソンは、自ら大統領を辞任しました。

詳細に知りたい方は、こちらをご覧ください。

大統領罷免の流れは?

大統領をやめさせたい(罷免したい)場合、弾劾裁判にかけることとなります。弾劾裁判で有罪となれば、大統領は罷免されます。

弾劾裁判とは普通の裁判とは異なり、裁判所ではなく、この場合米国議会の上院で行われます。

この弾劾裁判を実施するかどうかを決めるのは、米国議会の下院です。

簡単にまとめると、
1.議会下院で、弾劾裁判を行うことを決める(訴追案を可決する)
2.議会上院で、弾劾裁判を行う(有罪か無罪かを判断する)
3.弾劾裁判で有罪判決となると、大統領を罷免する

今回トランプ大統領は、下院で弾劾訴追案が可決され、1.弾劾裁判を行うことが決まりました。

ニクソン大統領は、この弾劾訴追案が採決される前に自ら辞任したため、弾劾訴追された歴代大統領の中に入らないのです。

では、ニクソンは弾劾訴追される前に辞任する必要があったのでしょうか?

ニクソン大統領はなぜ辞任したのか?

ニクソン以外の大統領は、弾劾裁判にかけられても任期を全うしています。今回のトランプ大統領も、弾劾訴追されてもものともせず、むしろそれを選挙戦に利用しようとしているとも言われています。

それでは、ニクソン大統領も辞任しなくてよかったのではないでしょうか?なぜニクソンは自ら辞任してしまったのでしょうか?

罷免には、出席議員の2/3の賛成が必要となります。

例えば、現在の議会上院は、与党共和党が過半数を占めるため、出席議員の2/3を得るためには、共和党員が反対票が必要となってきます。

つまり大統領を罷免するためには、共和党員の造反がないと成立しないのです。今回のトランプ大統領の場合、20人以上の大量造反が必要なため、有罪とすることは難しいとみられています。

ニクソン大統領の場合は、一連のウォーターゲート事件の中で、自分に不利な証拠を隠ぺいするために権力を乱用して行った検察官の解任(土曜日の虐殺)などから、共和党員の中でも大統領の支持が低迷し、たくさんの造反者が出ることが見込まれました。

そのため、ニクソンは弾劾裁判で有罪となる可能性が極めて高かったため、罷免される前に自ら辞任したのです。

アメリカ国内での展示

ワシントンDCにあるスミソニアン博物館の一つ、国立アメリカ歴史博物館では、大統領の弾劾に関する展示コーナーがあります。現在はニクソンを含む3人の大統領の名前が挙がっていますが、ここにトランプ大統領の名前が追加されることは間違いなさそうです。

https://i0.wp.com/yadakotour.work/wp-content/uploads/2019/12/DSC_5844_.jpg?fit=1024%2C575&ssl=1https://i0.wp.com/yadakotour.work/wp-content/uploads/2019/12/DSC_5844_.jpg?resize=150%2C150&ssl=1やだこ最近の関連ニュース米下院議会が2019年12月18日、トランプ大統領のウクライナ疑惑をめぐって、弾劾訴追の決議案を可決しました。 アメリカ史上、これまでに弾劾訴追された大統領は3人。1868年の第17代大統領アンドリュー・ジョンソン、1998年の第42代大統領ビル・クリントン、そして2019年のドナルド・トランプ。 NHK NEWS WEB:トランプ大統領を弾劾訴追 アメリカ史上3人目 米議会下院 ところで、米国大統領の弾劾といえば、ウォーターゲート事件のリチャード・ニクソンが真っ先に思い浮かびませんか? なぜニクソン大統領はここに仲間入りしないのか、わかりやすく解説していきます。 ウォーターゲート事件のリチャード・ニクソンは? ニクソン大統領は、アメリカ史上唯一の辞任した大統領であり、弾劾された大統領ではありません。 どう違うのか? 辞任とは、自分から辞めること。弾劾は、辞めさせられること。つまり、同じ大統領を辞めるということでも、ずいぶん意味合いが違うのです。 ではまず、そもそもウォーターゲート事件とは何か、簡単に見ていきます。 ウォーターゲート事件とは ウォーターゲート事件は、共和党のニクソン大統領が2期目の大統領選挙戦に勝つために、敵の民主党本部に盗聴器を仕掛けさせたことに端を発します。 ところが、計画は失敗。実行犯は現行犯逮捕され、ニクソン大統領の関与が疑われました。 ニクソンは自らの関与を否定して、隠ぺい工作に走りました。しかし、ニクソンの側近たちが徐々に真実を話すようになり、大統領自らの関与やその隠ぺい工作すべてが明らかとなりました。 支持率は20%台までに大幅に下落し、与党共和党員からの批判の声もあがっていき、弾劾を免れない状況に追い込まれたニクソンは、自ら大統領を辞任しました。 詳細に知りたい方は、こちらをご覧ください。 大統領罷免の流れは? 大統領をやめさせたい(罷免したい)場合、弾劾裁判にかけることとなります。弾劾裁判で有罪となれば、大統領は罷免されます。 弾劾裁判とは普通の裁判とは異なり、裁判所ではなく、この場合米国議会の上院で行われます。 この弾劾裁判を実施するかどうかを決めるのは、米国議会の下院です。 簡単にまとめると、 1.議会下院で、弾劾裁判を行うことを決める(訴追案を可決する) 2.議会上院で、弾劾裁判を行う(有罪か無罪かを判断する) 3.弾劾裁判で有罪判決となると、大統領を罷免する 今回トランプ大統領は、下院で弾劾訴追案が可決され、1.弾劾裁判を行うことが決まりました。 ニクソン大統領は、この弾劾訴追案が採決される前に自ら辞任したため、弾劾訴追された歴代大統領の中に入らないのです。 では、ニクソンは弾劾訴追される前に辞任する必要があったのでしょうか? ニクソン大統領はなぜ辞任したのか? ニクソン以外の大統領は、弾劾裁判にかけられても任期を全うしています。今回のトランプ大統領も、弾劾訴追されてもものともせず、むしろそれを選挙戦に利用しようとしているとも言われています。 それでは、ニクソン大統領も辞任しなくてよかったのではないでしょうか?なぜニクソンは自ら辞任してしまったのでしょうか? 罷免には、出席議員の2/3の賛成が必要となります。 例えば、現在の議会上院は、与党共和党が過半数を占めるため、出席議員の2/3を得るためには、共和党員が反対票が必要となってきます。 つまり大統領を罷免するためには、共和党員の造反がないと成立しないのです。今回のトランプ大統領の場合、20人以上の大量造反が必要なため、有罪とすることは難しいとみられています。 ニクソン大統領の場合は、一連のウォーターゲート事件の中で、自分に不利な証拠を隠ぺいするために権力を乱用して行った検察官の解任(土曜日の虐殺)などから、共和党員の中でも大統領の支持が低迷し、たくさんの造反者が出ることが見込まれました。 そのため、ニクソンは弾劾裁判で有罪となる可能性が極めて高かったため、罷免される前に自ら辞任したのです。 アメリカ国内での展示 ワシントンDCにあるスミソニアン博物館の一つ、国立アメリカ歴史博物館では、大統領の弾劾に関する展示コーナーがあります。現在はニクソンを含む3人の大統領の名前が挙がっていますが、ここにトランプ大統領の名前が追加されることは間違いなさそうです。一人旅でも100倍楽しめる アメリカ観光ナビ